やっと出会えた、と思った矢先に壮絶なお別れ
例年なら軽井沢の研修所で女性団体の研修会が行われるはずが、コロナ禍ゆえ、区役所内で規模縮小、オンラインも入れて感染予防をしながら、講談師の神田香織さんによる「種まく女性たち」企画が実施の運びとなりました。
私はこの頃、少し元気喪失、コロナ禍だというのに都心千代田区では、住民いじめのように開発と樹木伐採議案が続き、心の内側から少しずつ「厭世気分」「東京がどんどんダメになっていく方向に舵を切っていく」もう間に合わない、そんな鬱っぽい心持ちの時でもありました。
そんな気分も抱えつつ参加した「種まく女性」の講談は、想像を超えるもの、数々のこの世の理不尽を共感と希望に転換するパワー、心に刺さるものでした。言葉ってすごい、講談ってすごい、今なら週明けの質問原稿も書き換えられるからもう少し頑張ろう!と、そんな風に久しぶり前に向かうエネルギーが湧き出てきた瞬間でした。ところが・・・
この企画の裏方を担って下さった小林久美子さんが、このイベントの直後、講師の神田先生を送ろうとした区役所前の歩道で、タクシーに突撃されて亡くなるなどと誰が想像できたでしょう。運転手の方も悪くない、突然死。騒然とする現場から小林さんの救急車に同乗し、麹町警察の質問に答えながら搬送先へ、救命救急の方々の必死の蘇生、でも小林さんは戻りませんでした。
小林さんと同じ場所にいらした神田先生もその衝撃で、後頭部と腰を強打され、救急搬送されたというのに、まだその痛みがありながら、わずか1週間後の今日、なかの小劇場で予定通り書き下ろしの講談「原発事故で避難した少年の物語」を、さらにさらに力強く話されました。涙で自分のマスクが冷たくなっていく感じ、この1週間が走馬灯のように思い出されました。講談の主人公である鴨下全生(まつき)くんも自分の苦しみと闘いながら懸命に言葉を紡いでローマ教皇に手紙を書き、彼の手紙は教皇の心を動かし、世界が少し動きました。彼も言葉にすることで自分や身の上に起きたあらゆる理不尽と戦っているのだと思いました。
長くなりましたが、
私は天国の小林さんに手紙を書きました。それが私の救いになりました。ご遺族の方に感謝します。